【生物工学】出芽酵母におけるカンナビノイドの生合成
Nature
2019年2月28日
数種類の主要なカンナビノイド(大麻に含まれる化合物)が、遺伝的に改変された酵母によって作り出されたことを報告する論文が、今週掲載される。この研究によって、大麻の栽培と無関係にいろいろな種類のカンナビノイドを効率的に生産できる可能性が生まれた。
特定のカンナビノイドは、数カ国で、さまざまな疾患の治療薬として承認されてきた。現在のところ、カンナビノイドは大麻植物から抽出されているが、植物体における存在量は比較的少ない。このことはカンナビノイドの化学的複雑性と相まって、大量生産の妨げになっていた。
今回Jay Keaslingたちの研究グループは、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を遺伝的に改変して、生合成によりカンナビノイドを生産できるようにした。Keaslingたちは、大麻の遺伝子を出芽酵母の代謝経路に導入して、単糖類のガラクトースからカンナビノイドの前駆体分子(オリベトール酸など)を生成した。この出芽酵母は、オリベトール酸から、重要なカンナビノイドであるカンナビゲロール酸(CBGA)を合成した。CBGAを用いると、Δ9-テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)とカンナビジオール酸(CBDA)を生産できる。
また、Keaslingたちは、合成カンナビノイド(化学修飾されたTHCAなど)をガラクトースではなく脂肪酸から合成できることも実証した。以上の結果から、天然カンナビノイドと合成カンナビノイドの両方について大量生産の基礎が築かれた。これによって、これらの化合物の薬理学的研究が進展する可能性が生まれる。
doi:10.1038/s41586-019-0978-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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