【発生生物学】テストステロンがマウス雄胚を保護する
Nature
2019年2月21日
テストステロンは、炎症の有害な影響からマウス雄胚を守り、その生き残りを高めていると考えられることを報告する論文が、今週掲載される。テストステロンによる保護作用は、妊娠マウスにイブプロフェンを投与する実験で再現されたが、ヒトの妊娠においてイブプロフェンが胚を保護し得るということではない。
妊娠中は通常、胎児に害が及ばないように、炎症応答は抑制されている。胚発生の際の慢性的なDNA損傷によって炎症が発生する場合のあることは実証されているが、妊娠中の母体や胎児の炎症の影響についてはほとんど解明されていない。
今回、John Schimentiたちの研究グループは、胚発生の際にDNAの複製と修復に異常を引き起こす変異遺伝型を持つマウス胚の生存率を調べた。こうした異常が生じた後には、DNAの損傷と炎症が発生した。Schimentiたちは、このシナリオでは、マウス雌胚の生存率が雄胚よりかなり低いという観察結果を明らかにしている。生存率に性差が生じるのは、雄胚には、保護作用と抗炎症作用のあるテストステロンが存在しているためである可能性が非常に高い。妊娠マウスにテストステロンを投与すると、雌胚の生存率が顕著に上昇した。
さらにSchimentiたちは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の1つであるイブプロフェンを妊娠マウスに投与したところ、雄胚と雌胚の生存率に差はなくなった。炎症を引き起こす特定の原因を調べて、上記の知見をヒトに適用できるかを立証するには、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/s41586-019-0936-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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