地球内核はちょうどよい時に形成されたかもしれない
Nature Geoscience
2019年1月29日
地球の磁場は約5億6500万年前に最も強度が低くなり、その原動力となるダイナモは崩壊寸前だったことを示唆する論文が、今週掲載される。固体の地球内核の形成は地球磁場の強度を増大させたと考えられるので、今回の発見から、内核の固化がこの時までには完全に始まっていなかったことが示唆される。
内核が固化した時期についての見積もりはさまざまであり、25億年前というものもあれば5億年前というものもある。しかしこうした時期は、過去の地球磁場の性質を記録している岩石を分析することでより正確なものにできる。若い内核の境界で液体の鉄が固化することは、地球ダイナモ(外核における流体金属の対流運動で、地球磁場の原動力となる)の重要なエネルギー源となっていたと考えられる。複数のシミュレーションから、このエネルギーによる後押しが地球磁場強度の岩石記録に保存されていると予測されていた。
John Tardunoたちは今回、現在のカナダ・ケベック州東部において5億6500万年前に形成された斜長石と単斜輝石の単結晶内で見つかった小さな磁性包有物に記録された地球磁場の過去の強度と方向を測定した。その結果、Tardunoたちは、この時期の地球磁場強度が前例にないほど低く、またこの時期には地磁気反転が頻繁に起きていたことを見いだし、こうしたことから地球ダイナモは崩壊寸前だったと推測している。
関連のNews & Viewsでは、Peter Driscollが、「内核形成は、地球ダイナモを回復させて地球磁場による遮蔽を保つのに、ちょうどよい時に起きた可能性がある」と述べている。
doi:10.1038/s41561-018-0288-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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