Research Press Release
火星の塩水は生命維持に十分な量の酸素を含んでいる
Nature Geoscience
2018年10月23日
火星の表面直下にある塩水は、好気性微生物、あるいは海綿動物のような単純な動物を維持するために十分な量の分子状酸素を保持できることを報告する論文が、今週掲載される。
地球上では、酸素を使って呼吸する好気性生命は、大気の酸素レベルを上昇させた光合成生命と共に進化してきた。しかし、火星上の酸素は少なく、光によって二酸化炭素が分解されることでわずかな量の酸素が生成されるのみである。従って、火星上の分子状酸素では生命を維持できないと、これまで考えられてきた。
Vlada Stamenkovicたちは、分子状酸素が、火星表面近傍で予想されるさまざまな温度圧力条件下で、塩と水からなる液体の塩水にどの程度溶解し得るかを計算した。その結果、分子状酸素濃度は特に極地域で高いことが明らかになった。さらに、火星の表面下にある塩水には好気性生物を維持するのに十分な量の酸素を含む可能性があることが分かった。これらの知見によって、火星表面を調査している探査機が見つけた酸化した岩石が、どのようにして形成されたかについても説明できる可能性がある。
doi:10.1038/s41561-018-0243-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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