【天文学】近くを通過した矮小銀河によって天の川銀河の星の動きが多様化した
Nature
2018年9月20日
天の川銀河(銀河系)の600万個以上の星の動きについて追跡観測が行われ、銀河系の中心を周回する軌道がそれぞれ異なる星のグループがいくつも存在することを明らかにした論文が、今週掲載される。このように銀河回転が一様でないのは、天の川銀河より小さな伴銀河が数億年前に天の川銀河の近くを通過したことの結果だと考えられている。
天の川銀河の星の大部分は、銀河系の中心バルジを取り巻く平坦な領域である銀河円盤の中にある。この円盤の内部構造は、さまざまな影響を受けて形作られてきた。天の川銀河の中心部の棒状構造と渦状腕は、例えば、動径方向移動を誘発し、伴銀河の影響によって星の動きが変わることもある。しかし、銀河をモデル化する場合、一般的には、円盤内の星の動きはほぼ動的平衡にあり、銀河系面に対して対称であると仮定する。
今回、Teresa Antojaたちの研究グループは、ガイア宇宙望遠鏡からのデータを用いて、天の川銀河の円盤内にある星の動きと位置を分析した。Antojaたちは、星の運動をカテゴリー別に仕分けするための特別な位置-速度図を作成し、データ中にさまざまな渦巻きパターンを見いだした。これは、星が渦巻き運動をしていることを示しているのではなく、天の川銀河全体の回転に寄与しながら天の川銀河をさまざまな経路で移動する複数の星の集団が存在することを意味している。
このような星の動きが生じた原因について、Antojaたちは、3~9億年前に、いて座矮小銀河が天の川銀河の近くを通過したことを挙げている。これまでの研究は、精度が不足していて、対象とする星の数も少なかったため、さまざまな動きをする星の存在は明らかになっていなかった。
doi:10.1038/s41586-018-0510-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物学:雌のボノボは団結し、雄に対して優位性を発揮するCommunications Biology
-
量子物理学:通信インフラを活用した長距離量子通信Nature
-
人類学:カルタゴとフェニキアの間に家族的なつながりはほとんどないNature
-
気候変動:温暖化が進む世界で急激な「気温の変化」が増えているNature Communications
-
健康:高血圧の治療は認知症リスクを低減するかもしれないNature Medicine
-
気候:都市のヒートアイランド現象による気温関連死の評価Nature Climate Change