古ゲノム:ランゴバルド人の歴史を解明する手掛かりが得られた
Nature Communications
2018年9月12日
西暦紀元568年にパンノニア(現在のハンガリー西部)からイタリアに侵入し、その後200年以上にわたってイタリアの大部分を支配した蛮族(ランゴバルド人)の社会組織と移動を解明する手掛かりが古ゲノムDNAの解析によって得られた。この研究知見に関する論文が、今週掲載される。
3~10世紀の西ヨーロッパは社会文化的にも経済的にも変革期にあり、西ローマ帝国が崩壊し、ヨーロッパ全土で蛮族集団の移動があった。しかし、こうした蛮族社会の唯一の直接証拠は考古学的遺跡で発見されたものであり、この証拠を使って蛮族集団の正体と社会構造、移動パターンに関する推論が展開されてきた。6~7世紀のパンノニアとイタリアの考古学的墓地遺跡からは、ランゴバルド人の移動に関する史料と矛盾しないパターンが示唆されているが、ランゴバルド人の社会と移動については不明な点がかなり多い。
今回、Johannes Krause、Krishna Veeramah、Patrick Geary、David Caramelliたちの研究グループは、ソラッド(ハンガリー)とコレーニヨ(イタリア)という2カ所の墓地に埋葬されていた63体から採取した古ゲノムDNAの塩基配列解読と解析を行った。これまでの研究で、これらの遺体は、ランゴバルド人と関連付けられている。それぞれの墓地は、1つの大きな家系を中心にして組織されており、それぞれの墓地には、祖先と葬儀の風習を異にする集団が2つ以上埋葬されていることが明らかになった。
ソラッドの墓地は、3代にわたる地位の高い男性中心の血縁集団を中心にして組織されており、それに加えて中央/北ヨーロッパ系という共通点があったと考えられる男性の集団の墓もあった。コレーニヨの墓地は、その地に定着してから数世代を経たコミュニティーを反映したものである可能性が高い。主に中央ヨーロッパ系と北ヨーロッパ系の家族集団の両方において、南ヨーロッパ系の人々との混血があったことを示す証拠もKrauseたちは発見した。この新知見は、ランゴバルド人がパンノニアから北イタリアまで長距離の移動をしたとする学説と矛盾しない。
doi:10.1038/s41467-018-06024-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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