【生態学】深海サンゴ礁の白化レベルを評価する
Nature Communications
2018年9月5日
2016年の大量白化現象において、グレートバリアリーフの深海サンゴ礁は、浅海サンゴ礁より白化レベルが低かったことを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、深海サンゴ礁が熱ストレスからのある程度の避難地をもたらすと考えられるが、その保護効果は一時的で、広範な生態学的避難地となるには限界がある可能性が指摘されている。
深海(水深30~40メートル以深の海域)のサンゴ礁は、大量白化を回避する大規模な生態学的避難地として機能する可能性があるという学説が提起されていたが、こうした生態系の研究には複雑な後方支援体制が必要なため、白化の評価は限定的だった。
今回、Pedro Fradeたちの研究グループは、2016年の大規模なサンゴ白化現象におけるグレートバリアリーフ内の9地点の深海サンゴ礁の白化量を調べた。その結果、深海サンゴ礁への影響は深刻だった(水深40メートルでサンゴの40%が白化、6%が死滅)が、その程度は浅瀬よりも低いことが分かった(水深5~25メートルでサンゴの60~69%が白化、8~12%が死滅)。Fradeたちは、夏の初めには冷たい水の湧昇によってより深海にいるサンゴ礁はある程度保護されるが、夏の終わりには冷水の湧昇が止まり、保護効果が失われたことを明らかにした。
今回の研究では、熱からの避難地としての役割を果たす深海サンゴ礁の限界が明確に示されているが、Fradeたちは、浅海サンゴ礁と深海サンゴ礁の両方がサンゴの大量白化現象の脅威にさらされていると主張している。
doi:10.1038/s41467-018-05741-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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