Research Press Release
【素粒子物理学】高エネルギー粒子加速器の将来に光が見えた
Nature
2018年8月30日
陽子を用いたプラズマ航跡場加速が初めて実証されたことを報告する論文が、今週掲載される。この研究結果は、将来の高エネルギー粒子加速器の開発に1歩近づいたことを意味する。
高エネルギー粒子加速器は、基本粒子の理解を深める上で極めて重要な役割を果たしており、プラズマ航跡場加速という新しい技術は、これまでより小型で強力な新世代の粒子加速器を生み出せる可能性を秘めている。通常、この技術を用いて粒子の高エネルギー加速を実現するには、強力なレーザーパルスまたは電子バンチを使ってプラズマ波(航跡場)を作り出す方法が取られる。プラズマ波に捕捉された粒子(電子など)がこの波の電場で加速され、大きな加速とエネルギー利得が達成される。
今回、CERN(欧州原子核研究機構)のAWAKEコラボレーションは、陽子バンチに駆動されたプラズマ航跡場に電子を注入して、陽子を用いたプラズマ航跡場加速を初めて実証した。他のプラズマ航跡場加速技術では、複数の加速段階を経て電子を高いエネルギーまで加速させる必要があるが、陽子を用いる加速技術では、1つの加速段階でそれが実現される。共同研究チームは、10メートルのプラズマにおいて電子が最大2ギガ電子ボルト(GeV)まで加速されたという測定結果を示している。
まだ研究は初期段階だが、陽子を用いたプラズマ航跡場加速の初回試験の結果は、非常に有望といえる。
doi:10.1038/s41586-018-0485-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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