二酸化炭素の排出が人間の栄養に悪影響を及ぼす可能性
Nature Climate Change
2018年8月28日
今後、大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると、世界の多くの地域で人間の栄養状態が損なわれる恐れのあることを報告する論文が、今週掲載される。
大気中の二酸化炭素濃度は、思い切った気候変動緩和策が取られない限り、今後30~80年間に550 ppmを超えてしまうことが予想されている。二酸化炭素濃度がこのような値まで上昇すると、多くの主要作物に含まれる鉄、タンパク質、亜鉛の量が3~17%減少すると推定されている。このような食物栄養素の減少は、健康転帰の悪化につながる可能性がある。
今回、Matthew SmithとSamuel Myersは、大気中二酸化炭素濃度の上昇が151カ国の国民の鉄分、タンパク質、亜鉛分の摂取量の充足性に及ぼす影響を、225種の食物についての年齢別・性別の入手可能性モデルを使って調べた。
その結果、大気中二酸化炭素濃度が上昇すると、2050年までに、1億7500万人が新たに亜鉛欠乏症になり、1億2200万人が新たにタンパク質欠乏症になることが明らかになった。また、妊娠可能年齢の女性と5歳未満の子どもの計14億人が、貧血の有病率が20%を超える国に居住し、食事からの鉄分摂取量が4%以上減少することになるとされる。
飢餓状態が顕著に悪化し、こうした変化を補うための政策実施への機運が高まるまでに、栄養欠乏症の有病率と重症度は全世界で増加してしまう可能性がある。この点が特に懸念されているのが、アフリカ、南アジア、東南アジア、中東である。
doi:10.1038/s41558-018-0253-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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