【地球科学】イタリアのピサにあった港の複雑な歴史
Scientific Reports
2018年8月24日
かつてイタリアのピサにあったポルトゥス・ピサヌスという港の発展と消失に関する新たな知見について報告する論文が、今週掲載される。
ポルトゥス・ピサヌスは、ローマ時代と中世のイタリアで最も影響力のあった海港の1つと説明されてきたが、その環境とその歴史上の主要な段階との関係は、ほとんど解明されていない。
今回、David Kaniewskiたちの研究グループは、長期的な沿岸動態と海水面上昇、および環境変化がポルトゥス・ピサヌスの発展において果たした役割を解明するために、リグリア海東部の1万500年間にわたる相対的な海水準の推移を再現した。また、各時代の地図と地質学的データを組み合わせることで、ピサのポルトゥス・ピサヌス港周辺の海岸の形状の推移を再現した。そして、堆積層から採集された生物試料を分析して、海水や淡水、農業活動がこの地域の環境にどのような影響を及ぼしたのかを調べた上で、文献や考古学的データと照合した。
その結果、紀元前200年頃に、自然に風波から守られていて海との連絡が良い潟がピサ市南方に形成され、これが船舶の航行と貿易に役立ち、複合港の形成が促進されたことが示唆された。この潟には、ポルトゥス・ピサヌスが5世紀過ぎまで存続したが、海岸線が沖に移動し、海との連絡が1000~1250年頃から悪化した。そして1500年頃に、この潟は海から隔絶されて消失し、ポルトゥス・ピサヌスは沿岸湖となって、臨海港リボルノに取って代わられた。
doi:10.1038/s41598-018-29890-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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