Research Press Release
【物理学】宇宙空間で作動する原子時計
Nature Communications
2018年7月25日
宇宙空間で作動する低温原子時計を紹介する論文が、今週掲載される。この知見は、低温原子を用いて軌道上で安定的に作動する原子時計を作れることを実証しており、低温原子が計測や物理学の基本原理の一部の検証においても利用できる可能性を示している。
原子時計は、2つの原子準位間のエネルギー差に基づいて時を刻む。低温原子間のエネルギー差はレーザーを用いて正確に測定でき、低温原子時計は、実験室条件下で外部摂動に対して安定を保つ。しかし、低温原子時計を宇宙空間で長期間作動させることは、その周囲の場と地球の放射線帯から放出される高エネルギー粒子が原子時計の安定性を損なうため、難しい課題となっている。
今回の論文で、Liang Liuたちは、低温原子時計が軌道上で安定的に作動することを示す証拠について報告している。Liuたちは、微小重力環境中でマイクロ波パルスとレーザーパルスを用いて、ルビジウム原子の捕獲と冷却と測定を行った。その結果、マイクロ波パルスの測定によって原子の集団が検出され、軌道上の原子時計の安定度が10兆分の3であることが判明した。
このように過酷な環境と微小重力環境においてロバストで安定している低温原子時計は、宇宙空間で用いる測定用センサーの開発や、基礎定数の変動、一般相対性理論、およびアインシュタインの等価原理の破れを検証するために利用できる可能性がある。
doi:10.1038/s41467-018-05219-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
化石:最も古く知られている「爬虫類」の足跡Nature
-
惑星科学:月内部の非対称性を示す証拠Nature
-
古生物学:「シカゴ」始祖鳥が、この古代鳥に新たな知見をもたらすNature
-
理論物理学:二体問題を解くNature
-
がん:乳がん治療薬の臨床試験で生存率の向上が示されたものの、がんの消失は限定的であったNature Communications
-
Nature Scientist at Work コンペティションの受賞者の発表Nature