Research Press Release

エウロパでの生命探査に深い採掘は必要ない

Nature Astronomy

2018年7月24日

エウロパにおける生命の痕跡は、我々の手が届くところからわずか1センチメートルのところにあるかもしれないことを示唆する論文が、今週発表される。エウロパの中緯度から高緯度に位置する若い領域は、そのような痕跡を探し出すのに最適な場所である可能性があり、将来のエウロパへ着陸機のミッションに対して有用な情報をもたらすかもしれない。

木星の衛星エウロパは、その氷殻の下に液体の海を保持していることから、地球外生命体探査の主要な対象となっている。しかし、エウロパは厳しい放射線環境にさらされているため、表面のあらゆる生物学的物質の痕跡は速やかに消されてしまう可能性がある。このことから、地球から送り出す着陸機が識別できる有機物試料を得るためには、エウロパの固い氷殻を数メートル掘削する必要があると考えられているが、現在の我々の能力では難しい。

Tom Nordheimたちは、エウロパの表面に衝突する高エネルギー粒子の影響をモデル化し、放射線がどのくらいの速さでアミノ酸を破壊するかについて、推定値と実験室でのデータを比較した。その結果、中緯度から高緯度では、アミノ酸が、1000万年の時間スケールにわたって、エウロパ表面のわずか1~3センチメートルの深さに検出可能なレベルで残存している可能性があることが分かった。しかし、より放射線を受けやすい赤道領域では、この深さは数十センチメートルに達する。

Nordheimたちは、これらの結果から、将来のエウロパ着陸機が生命体の痕跡の可能性を探査する際に着陸地点を慎重に選べば、そこまで深く掘削する必要はないであろうと結論付けた。NASAが計画するエウロパ・クリッパー・ミッションのような、軌道周回あるいは近接接近で行われるエウロパ表面の観測は、そうした領域を特定するために重要であると考えられる。

doi:10.1038/s41550-018-0499-8

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度