【考古学】やはりネアンデルタール人は火をおこしていた
Scientific Reports
2018年7月20日
ネアンデルタール人は、現生人類と同じように、石器を使って火をおこす方法を知っていた、とする研究報告が、今週発表される。
ネアンデルタール人が火を利用していたことは過去の研究で明らかになっているが、火をどのようにして手に入れていたのか(野火を集めていたのか、あるいは自分でおこしていたのか)をめぐる論争は決着していない。黄鉄鉱(鉄を含む鉱物の1種)とフリント(石英の微細結晶からなる黒灰色の硬い岩石)を打ち合わせて火をおこしていたことの証拠となる、独特の形状のフリント製石器がユーラシア全土の数多くのホモサピエンスの遺跡から出土している。しかし、そのような石器は、ネアンデルタール人の遺跡からは見つかっていない。
今回、Andrew Sorensenたちの研究グループは、過去に発見されたフリント製石器で、ネアンデルタール人が他の作業(例えば、動物の食肉処理)に用いていたとされるものを対象に、火をおこすために用いられていた可能性を示す痕跡がないかどうかを調べた。その結果、このフリント製石器に鉱物の痕跡が同定され、硬い無機物質が繰り返し打ち付けられていたことが示唆された。次にSorensenたちは、フリント製石器のレプリカを作り、それらを使ってさまざまな石質材が関係する数々の作業(黄鉄鉱の破片を使って火をおこすなど)を行い、8個のレプリカに鉱物の痕跡を残した。
Sorensenたちは、こうした各作業においてフリント製石器のレプリカに残されたさまざまな痕跡を分析し、火をおこす作業によって残された痕跡が、過去に発見されたネアンデルタール人の石器に見られる鉱物の痕跡との一致度が最も高いと結論付けた。このことから、ネアンデルタール人自身が石器を使って火をおこしていたことが示唆される。
doi:10.1038/s41598-018-28342-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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