Research Press Release

既存の降圧剤を1型糖尿病治療に転用する

Nature Medicine

2018年7月10日

降圧剤ベラパミルが、1型糖尿病を初発した成人患者でのインスリン治療の効果をさらに高めることが分かった。1型糖尿病では、膵臓中にあってインスリンを分泌するβ細胞の大半を免疫系が破壊してしまう。主要な治療法はインスリンの補充で、インスリン注射を毎日打つのだが、血糖値の上昇を補正し過ぎて低血糖を引き起こすことがあり、これは昏睡につながりかねない。そのため、インスリンの使用量を減らせる新規な治療法や補助療法が求められてきた。

A Shalevたちは以前、糖尿病がβ細胞に及ぼす有害な作用の一因は、β細胞へのカルシウムイオンの流入増加に応答して起こるチオレドキシン結合タンパク質(TXNIP)の増加であることをマウスを使って明らかにし、さらに、ベラパミルでカルシウムチャネル活性を阻害するとTXNIPレベルも低下して、糖尿病の進行につれて起こるβ細胞喪失が阻止されることを実証した。

今回、これらの知見に基づいて、糖尿病を初めて発症した24人の未治療成人患者を被験者として無作為化プラセボ対照二重盲検法による第II相臨床試験が行われ、ベラパミルの効果が検証された。11人の被験者は標準的なインスリン治療に加えてベラパミル投与を1年間にわたって受け、残りの被験者はインスリン治療だけを受けた。その結果、ベラパミルはβ細胞機能の保存を助ける一方で、病気の進行に伴うインスリン必要量の増加も抑えることが明らかになった。ベラパミルはまた、低血糖発作の発生率も大幅に低下させた。

ベラパミルは優れた安全性が記録されている薬であることを考えれば、糖尿病の補助治療法として使えるとShalevたちは予想している。しかし、より若い患者や発症してから時間がたって病態が確立された患者での検証に加えて、もっと大規模で長期的な臨床試験を行う必要があるだろう。
Letter p. 1108

doi:10.1038/s41591-018-0089-4

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