【健康科学】アフリカの乳児の死亡率に対する大気汚染の影響
Nature
2018年6月28日
アフリカの調査地点での2015年の大気汚染を1立方メートル当たり5マイクログラム削減できれば、約4万人の乳児の死亡を防げたかもしれないことを示唆するモデル研究について報告する論文が、今週掲載される。
大気の質の劣悪さは死亡、障害、体調不良と関連しており、周囲の空気中に含まれる吸い込み可能な直径2.5マイクロメートル未満の粒子状物質(PM2.5)が全世界の毎年約300~400万人の死亡例と関連付けられてきた。しかし、こうした見積もりは、大気汚染測定所の大半が立地する先進国で得られたデータに大きく依存している。大気汚染は、一般にサハラ砂漠以南のアフリカの方がかなり深刻だが、どの地域のデータに基づいて政策決定を行うかについての理解は不十分なままだ。
今回、Marshall Burkeたちの研究グループは、大気汚染粒子の濃度を推定する人工衛星観測データと、2001~2015年のサハラ砂漠以南のアフリカ全体での乳児約1億人の出生(とその後の死亡)の場所と時期に関する世帯健康調査データを組み合わせた。その結果、PM2.5濃度が1立方メートル当たり10マイクログラム増加すると、乳児の死亡率が約9%上昇すると推定され、こうしたPM2.5の影響は15年間の調査期間にわたって一貫して見られた。また、Burkeたちは、一般的な予想に反して、大気汚染の悪影響が裕福な世帯にも同じように及ぶことも明らかにした。
さらに、Burkeたちは、2015年のアフリカ全土の大気汚染を1立方メートル当たり5マイクログラム削減できれば(米国の大気浄化法による削減成果に相当)、約4万人の乳児の死亡を避けることができた可能性があると見積もっている。この新知見は、アフリカにおいてわずかな大気汚染の改善を実現するだけで乳児の健康にもたらされる利益を明確に示していると、Burkeたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41586-018-0263-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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