【生物学】アフリカミツバチのコロニーに出現する女王バチのクローン
Scientific Reports
2018年5月25日
アフリカミツバチ(Apis mellifera scutellata)のコロニーにおける女王バチの存否は、寄生性ケープミツバチ(Apis mellifera capensis)種の働きバチが巣に侵入して繁殖し、コロニーを支配して、最終的にコロニーのを崩壊させるかどうかを左右する重要な要因であることを報告する論文が、今週掲載される。
ケープミツバチの働きバチは、自分たちのコロニーに女王バチが存在していると繁殖しないが、アフリカミツバチのコロニーに侵入すると、偽女王バチ(クローン)となって、そのコロニーの本来の女王バチの生殖機能を果たすようになる。しかし、アフリカミツバチの女王バチが存在していると、ケープミツバチの働きバチの卵巣の活性化を阻害するフェロモンシグナルによって、この働きバチが生殖的に優位に立たないようにすることができる。
今回、Fiona Mumokiたちの研究グループは、アフリカミツバチの女王バチが存在するコロニーと女王バチが不在のコロニーから集めたケープミツバチの働きバチについて、卵巣の活性化とフェロモン特性を分析した。その結果、女王不在のコロニーから採集されたケープミツバチの働きバチは全て卵巣が活性化していたが、女王のいるコロニー由来の働きバチではわずか10%しか活性化していなかった。また、女王のいるコロニー由来のケープミツバチの働きバチのフェロモンの特性は、働きバチのフェロモンに近く、女王不在のコロニー由来の働きバチは、女王バチのフェロモンに近かった。
今回の研究結果は、適切なコロニーの条件が満たされれば、アフリカミツバチの女王バチが、侵入する働きバチのフェロモン特性と生殖能力に影響を及ぼして、生殖面で優位に立たさず、コロニーの崩壊も阻止できることを示唆している。
doi:10.1038/s41598-018-26060-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
化石:最も古く知られている「爬虫類」の足跡Nature
-
惑星科学:月内部の非対称性を示す証拠Nature
-
古生物学:「シカゴ」始祖鳥が、この古代鳥に新たな知見をもたらすNature
-
理論物理学:二体問題を解くNature
-
がん:乳がん治療薬の臨床試験で生存率の向上が示されたものの、がんの消失は限定的であったNature Communications
-
Nature Scientist at Work コンペティションの受賞者の発表Nature