Research Press Release
【発生学】ヒトの幹細胞からもオーガナイザーが誘導される
Nature
2018年5月24日
オーガナイザーは、胚発生の統率と誘導に寄与する細胞群としてずっと以前から理論化されてきたが、このほどヒト組織中にも存在していることを初めて実証する論文が、今週掲載される。今回の研究は、初期胚発生の新しいモデルをもたらすもので、オーガナイザーが動物界全体にわたって高度に保存されていることを示唆している。
ハンス・シュペーマンとヒルデ・マンゴルトが1924年に行った実験は、発生生物学における最も著名な実験の1つであることにほぼ間違いがない。彼らは、イモリ胚の微小組織片を別のイモリ胚に移植し、移植先の細胞が誘導されて第2の胚が生じることを明らかにした。この移植部位は、その周囲に移植先の細胞を組織化できることからオーガナイザーと呼ばれた。
今回、Ali Brivanlouたちの研究グループは、マイクロプリントされた特製ディスク上でヒト胚性幹(ES)細胞を培養し、成長因子で処理したところ、ES細胞からオーガナイザー様組織の生成が誘導された。次に、この細胞群をニワトリ胚に移植したところ、その周囲にある細胞から細長い神経組織の形成が誘導され、オーガナイザー能力が実証された。Brivanlouたちは、ヒト幹細胞を用いてオーガナイザーの特性を示す組織を得ることによって、幹細胞の働きの理解をさらに進めるシステムを確立した。
doi:10.1038/s41586-018-0150-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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