Research Press Release

【がん】乳がん細胞が休眠していられる仕組み

Nature Communications

2018年5月23日

他の臓器へ播種されて休眠状態にある乳がん細胞は、オートファジーを起こすことで確実に長期にわたり生存できるようになることを明らかにした論文が、今週掲載される。

乳がんによる死亡の主な原因は、最初の診断・治療を受けた後の再発であり、この再発は、休眠中の腫瘍細胞の転移の発生によって起こる。しかし、休眠中の乳がん細胞の長期にわたる生存に関わる過程は、ほとんど解明されていない。オートファジーは、使い古された細胞成分の一部を分解し、再利用成分と置き換えることによって細胞を自己修復する基本的な機構だ。

今回、Kent Hunterたちの研究グループは、播種した乳がん細胞がオートファジーを起こし、播種先の臓器において休止状態で生き残ることを明らかにした。Hunterたちは、3次元細胞モデルとマウスモデルを使って、播種して休眠状態にある乳がん細胞におけるオートファジーが遺伝的操作や阻害薬によって阻害されると、乳がん細胞の生存が妨げられ、播種先の臓器で腫瘍の増殖が抑制されることを示した。また、Hunterたちは、オートファジーの阻害によって腫瘍細胞の生存能力が低下した機構が、損傷したミトコンドリアと酸化ストレスが蓄積して細胞死が発生したからであることを明らかにした。

Hunterたちは、オートファジーの選択的阻害には乳がんの再発を防止する治療可能性があるという考えを示している。

doi:10.1038/s41467-018-04070-6

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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