Research Press Release
【環境科学】クロロフルオロカーボンの大気中濃度の低下傾向が鈍化している
Nature
2018年5月17日
フロンガスの1種であるトリクロロフルオロメタン(CFC-11)の大気中濃度の低下率が、2012年以降に約50%鈍化したことを報告する論文が、今週掲載される。新たな生産拠点による排出を原因とする考えが、この論文に示されている。
モントリオール議定書は、大気中のクロロフルオロカーボン(CFC)などのオゾン破壊物質の存在量を減らしてオゾン層を保護することを目的として策定された。1990年代以降にオゾン破壊物質である塩素の大気中総濃度が低下したことに対して、2番目に大きな寄与をしたのが大気中のCFC-11濃度の低下だった。
今回、Stephen Montzkaたちの研究グループは、遠隔の測定地点で観測されたCFC-11の大気中濃度の低下率が、2002~2012年は横ばいで、2012年以降は約50%鈍化したことを明らかにした。Montzkaたちは、シミュレーションに基づいて、2012年以降にCFC-11排出量が増加したという見解を示している。この排出量の増加は過去の製造活動とは無関係と考えられ、Montzkaたちは、新たに製造が行われていることが原因であり、それが国連環境計画のオゾン事務局に報告されていない可能性を示唆している。そうだとすれば、2010年にCFCの製造を全廃するというモントリオール議定書の合意内容に違反があるということになる。
doi:10.1038/s41586-018-0106-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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