【物理学】指の関節がポキッと鳴るメカニズム
Scientific Reports
2018年3月30日
指の関節をポキッと鳴らすのは、非常にありふれたことだが、指の骨と手の骨の間の関節が外れる時に生じる典型的な音の原因については、1900年代初頭から科学者の間で論争が続いている。V. Chandran SujaとAbdul Bakaratが今週報告する数理モデルは、この原因の説明となるかもしれない。
SujaとBakaratは、関節の幾何学的表現と一連の数式を組み合わせて、ポキッと鳴るまでの一連の事象のシミュレーションを行った。このシミュレーションからは、指の関節を鳴らす時の関節の動きによって滑液の液圧が変化して、滑液に含まれる微細気泡が崩壊することが示唆されている。この微細気泡の崩壊によってポキッという音が生じる、とする学説が1971年に提唱されたが、その40年後に、この学説を否定する考えが示された。指の関節をポキッと鳴らしてから長い時間が経っても、微細気泡が残っていたことが実験で示されたためだ。しかしSujaたちの数理モデルは、微細気泡の全部ではなく一部が崩壊するだけでポキッという音が生じ、指の関節をポキッと鳴らした後も滑液に微細気泡が残ることを明らかにして、この矛盾を解消できたと考えられる。
また、Sujaたちは、微細気泡の崩壊によって生じる気圧が音波を発生させ、この音波が数理的に予測でき、実験的に測定できることを明らかにした。このモデルによって算出された音圧波は、文献に示された指の関節を鳴らす時の音響的特徴とも、3人の被験者が実際に指の関節を鳴らした時にSujaたちが作成した記録とも、非常によく似ている。この数理シミュレーションと実験結果との類似性(グラフ上で視覚的に確認できる)から、Sujaたちのモデルは、指の関節をポキッと鳴らす際の音の特徴を明らかにするだけでなく、その原因を微細気泡の崩壊と考えるのが妥当であることを示しているだろう。
doi:10.1038/s41598-018-22664-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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