【工学】高性能の構造材料として使える圧縮木材
Nature
2018年2月8日
バルク状態の天然木材を強度、靭性、耐弾性に優れた高性能構造材料に変える簡単な方法を記述した論文が、今週掲載される。この圧縮木材は、本質的に軽量で、ほぼ全ての構造用金属や合金よりも高い比耐久性を実現している。
並外れた機械的性能を発揮する人工構造材料は、重く、鋼や合金のように製造の際に環境に悪影響を及ぼし、あるいはポリマー系複合材や生体模様複合材料のように多額の費用を要するものが多い。これに対して、天然木材は、安価で豊富に存在しており、建物や家具の構造材料として何千年にもわたって用いられてきたが、多くの高度なエンジニアリング構造物と工学用途において十分な機械的性能が得られなかった。
今回、Liangbing Huたちの研究グループは、圧縮前に木材を処理するという新たな方法を開発した。これによって、既存の製造プロセスで圧縮された木材だと脆弱化する多湿条件下にあっても木材の寸法安定性と機械的特性が大きく向上する。Huたちは、木材の加熱圧縮処理を行う前にリグニン成分とヘミセルロース成分を一部除去することで、木材をより効果的に圧縮し、厚さを80%減、密度を約3倍増とした。リグニンとヘミセルロースを完全に除去してしまうと木材の質が低下するため、木材を結合させるためにはリグニンの一部を保持する必要がある、とHuたちは考えている。得られた材料は、強度、靭性、耐弾性に優れていると同時に、他の多くの構造材料と比べて耐湿性が高く、軽量で、処理が簡単でその費用も安く、製造の際の環境破壊も少ない。
doi:10.1038/nature25476
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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