導入種と侵入種の国際登録制度
Scientific Data
2018年1月24日
絶滅危惧種が列挙されたIUCNレッド・リストのように、全世界の侵入種が記載された総合カタログの作成を目指す広範な国際共同研究グループからの初めてのデータが、今週Scientific Dataで公開される。このデータは、20カ国6400種以上を対象とし、そのうち25%の生物種が生物多様性と生態系に悪影響を及ぼしていることが明らかになっている。
国境を越えた貿易や輸送は、新種の導入を促進する主要因であり、どの生物種がどこに存在しているのかを知ることは、生物多様性や生態系に対するリスクを評価し、優先種を特定し、新たな外来種の侵入速度を低減する上で非常に重要だ。いくつかの国では、導入種と侵入種のデータ管理に取り組むための有効なソリューションの開発が各地域で進められているが、地球規模の代表的なデータや、比較可能なデータはなかった。
国際共同研究グループのShyama Pagad、Melodie McGeochらはこの論文で、国際侵入種登録制度(GRIIS)を紹介している。これは、初めての導入種と侵入種の国別チェックリストであり、導入種と侵入種を高い透明性と再現性で分析および報告できる持続可能なプラットフォームとして考案された。
研究グループは、実例として、ブルネイ、チリ、クック諸島、クロアチア、キューバ、エジプト、アイルランド、モンゴル、ミャンマー、ネパール、ロシア、セントルシア、サウジアラビア、セイシェル、南アフリカ、スリランカ、チュニジア、アラブ首長国連邦、バヌアツ、イエメンの国別チェックリストを紹介しており、GRIISは、各国が特定外来生物の同定と優先的対応を行い、国別および世界規模の基準を確立し、将来的に環境に影響を及ぼす生物の侵入の動向について持続可能なモニタリングを行う国際的制度を実現する際に役立つと考えている。
上記のチェックリストは、GRIISのホームページ(http://www.griis.org/)とGlobal Biodiversity Information Facility(https://www.gbif.org/)で公開されている。
doi:10.1038/sdata.2017.202
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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