Research Press Release

【医学研究】重度の月経出血の新しい治療法の可能性

Nature Communications

2018年1月24日

重度の月経出血の治療を目的とした、従来の外科手術とホルモン療法に代わる新しい方法をマウスモデルで示した論文が、今週掲載される。女性の5人に1人が、人生のある時点で重度の月経出血を経験している。その治療法の1つが外科手術だが、手術後は妊娠できなくなる事例が多い。もう1つの治療法がホルモン療法で、広範囲の副作用を伴っている。そのため、これらに代わる治療法開発に向けて、さらなる研究が求められている。

排卵後に受精卵の着床がない場合に、子宮内膜の一部が剥離し出血と共に体外に排出される現象が月経で、子宮内膜が修復されるまで出血は続く。月経の際に激しい痛みと大量の出血を経験し、重度の貧血を発症するリスクが生じる女性は多い。

今回、Jackie Maybin、Hilary Critchleyたちの研究グループは、子宮内膜がうまく修復されるには低酸素状態になる必要があり、PHD阻害剤という医薬品を月経時のマウスに投与する実験で子宮内膜の修復が促進されることを明らかにした。このPHD阻害剤には、子宮を「騙して」酸素濃度が低いと思わせる作用がある。この実験からは、PHD阻害剤を女性に投与して子宮内膜の修復を加速させ、月経時の出血とそれに関連する症状を緩和し得ることが示唆されているが、こうした結果がヒトでも得られることを確認するため、今後も研究を行う必要がある。

doi:10.1038/s41467-017-02375-6

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度