【地球科学】熱帯の炭素吸収源であるボルネオ島の森林が脆弱化している
Nature Communications
2017年12月20日
ボルネオ島(インドネシア)の手付かずの森林は、過去50年間に成長を続け、大気中の炭素を除去してきたことを報告する研究論文が、今週掲載される。これまで東南アジアの熱帯林の炭素吸収量のデータがなかったが、今回の研究で得られた知見は、アマゾン川流域と熱帯アフリカでの森林の成長に関する最近の推計結果と一致しており、これまで欠落していた汎熱帯森林の炭素吸収源に関する証拠となる。
今回、Lan Qieたちの研究グループは、1958~2015年にわたってボルネオ島の森林の長期モニタリングを行ってきた71の調査区のデータを用いて、ボルネオ島の手付かずの森林における地上部の生バイオマス量に基づく炭素量が、1988~2010年の平均で増加しており、その規模がアフリカとアマゾン川流域のモニタリング調査区のネットワークの測定結果に匹敵していたことを明らかにした。その一方で、Qieたちは、炭素吸収源となっているボルネオ島の森林が気候と土地利用の変化に対して脆弱であることも明らかにしている。例えば、人間の活動による森林の分断化は炭素の放出につながり、その結果として炭素の吸収が相殺されてしまうことがある。また、1997~1998年のエルニーニョ現象による干ばつでは、樹木の枯死が増えて、炭素の取り込みが一時的に停止していた。
以上の結果は、熱帯林が、人間の活動による気候変動を緩和するうえで役立っている一方で、干ばつや土地利用の変化に対して脆弱で、大気中の炭素を除去する能力が影響を受けていることを示唆する新たな証拠になっている。
doi:10.1038/s41467-017-01997-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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