【量子物理学】量子シミュレーターの開発研究が大きく飛躍
Nature
2017年11月30日
極めて多数の制御「キュービット」(量子コンピューターの基本単位で、古典的コンピューターのビットに相当する)を備えた量子シミュレーターが2つの別々の実験で実証されたことを報告する論文が、今週掲載される。このシステムは、古典的コンピューターを使ってモデル化できない相互作用の研究に利用できる可能性がある。
量子シミュレーターは、量子粒子の相互作用を調べる(シミュレートする)量子コンピューターの一形態で、将来的に性能を高めた量子コンピューターを設計する際に役立つ可能性がある。少ない数の個別に制御されたキュービットを用いて分子などの系をシミュレートすることはすでに行われている。しかし、これを大きな量子素子の集団にスケールアップし、それによって今まで以上に複雑な多体量子系をシミュレートすることは難題となっている。
このほど、多数の制御キュービットを備えた量子シミュレーターが2つの独立した研究で実証された。Mikhail Lukinたちの研究グループがいわゆるリュードベリ状態にある原子(51個)を用い、Christopher Monroeたちの研究グループがトラップされたイオン(53個)を用いてイジング型量子磁性体における相転移(量子相互作用の簡易な「おもちゃ」モデル)を調べた。いずれの研究グループも量子粒子の秩序状態への転移を観測し、詳細に調べた。その結果、古典的な方法では説明できない多体相互作用に関する新たな知見がもたらされた。2つの研究で得られた知見から、今までより規模の大きな系における量子ダイナミクスと量子シミュレーションの研究プラットフォームが得られる可能性がある。
doi:10.1038/nature24654
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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