【医学研究】脊髄損傷患者の下肢の運動機能回復
Scientific Reports
2017年10月27日
損傷より下位の感覚機能と運動機能が失われた完全型脊髄損傷の患者が、脊髄硬膜外刺激療法を実施せずに随意的に脚を動かしたり立ったりする能力を徐々に回復していったことを報告する論文が、今週掲載される。
これまでに行われた慢性期の臨床的運動完全脊髄損傷の患者(4人)が参加する試験では、腰仙髄硬膜外刺激療法(scES;電気信号を運動ニューロンに送る方法)と体を動かす機能回復訓練によって、scES装置を作動させた時の患者の立ち上がり能力が回復したことが判明しており、scESの実施により患者の下肢の随意運動が比較的良好な状態になることも明らかになっていた。
今回、Susan Harkemaたちの研究グループは、上述の試験の終了時に4人の参加者のうちの1人を被験者として、体を動かす機能回復訓練とscESを実験室と自宅で実施した。その後の44か月間に、この被験者の下肢の随意運動を制御する能力とscESを使用せずに独力で立ち上がる能力が大きく回復した。Harkemaたちは、訓練期間後に独力で立ち上がる能力が観察されたのは今回が初めてで、この訓練期間が、訓練の実施頻度と訓練対象課題と被験者の随意的関与の点で従来の訓練期間とは大きく異なっていたことを指摘している。
Harkemaたちは、今後の研究では、体を動かす機能回復訓練の構成要素をさまざまに設定して、生理的適応にどのような影響を及ぼし、重度の脊髄損傷を受けた後の運動機能回復をもたらすのかについて解明を進めるべきだという考えを示している。
doi:10.1038/s41598-017-14003-w
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