Research Press Release
【生体材料】興味を引きつける3次元細胞構造体の作製方法
Nature Communications
2017年9月13日
心臓細胞に分化し得る胚性幹細胞(ES細胞)の3次元(3D)凝集塊を磁気によって生成する方法について説明した論文が、今週掲載される。個々の細胞から3次元組織構造体を作製し、それに刺激を加えて、より特殊化した細胞型を生成することは、再生医療の重要な目標の1つだ。
幹細胞の分化が機械的要因の影響を受けることは多くの研究によって実証されているが、そうした研究の大半は2次元構造体に着目していた。今回、Claire Wilhelmたちの論文では、3次元ES細胞構造体の磁気的集合と遠隔的な機械刺激による幹細胞分化について説明されている。Wilhelmたちは、酸化鉄ナノ粒子をES細胞に組み込むことで、この構造体を生成できることを明らかにした。また、いったん磁化したES細胞は、磁場を使って遠隔的に操作することで3次元凝集塊を生成し、機械的に刺激して心臓細胞に分化誘導できることも明らかになった。さらにWilhelmたちは、磁性酸化鉄粒子がES細胞に内部移行してもES細胞の生存性や多能性(さまざまな細胞型に分化する能力)が影響を受けないことも発見した。
この新しい方法は、生化学的要因を用いずにES細胞の分化プロファイル全体を調べる際に利用でき、従来の3次元組織構造体の作製法にとって代わる可能性もある。
doi:10.1038/s41467-017-00543-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
化石:最も古く知られている「爬虫類」の足跡Nature
-
惑星科学:月内部の非対称性を示す証拠Nature
-
古生物学:「シカゴ」始祖鳥が、この古代鳥に新たな知見をもたらすNature
-
理論物理学:二体問題を解くNature
-
がん:乳がん治療薬の臨床試験で生存率の向上が示されたものの、がんの消失は限定的であったNature Communications
-
Nature Scientist at Work コンペティションの受賞者の発表Nature