鳴禽類には遺伝的な音楽の好みがある
Nature Ecology & Evolution
2017年6月13日
2種のヒタキ科鳥類に関する今週の掲載論文によれば、鳴禽類が若いうちに鳥のさえずりの違いを聞き分ける能力は、遺伝的に決定付けられているのだという。
鳴禽類は、同種と近縁種のさえずりをヒナのうちから聞き分ける。しかし、さえずりの聞き分けの背後にあるメカニズムは知られておらず、ヒナの時期の経験や母鳥の影響、遺伝的背景など、さまざまな要因の寄与が考えられる。
David WheatcroftとAnna Qvarnstromは、マダラヒタキとシロエリヒタキの巣の胚を交換した。この2種は、バルト海のエーランド島にみられる鳴禽類である。著者たちは、ヒナが、同種でない鳥の成体に育てられた場合であっても、自分自身の種のさえずりの方に強く反応することを発見した。このことは、ヒナの時期のさえずりの聞き分けがヒナの時期に聞いたさえずりに依存するわけではないことを示唆している。次に著者たちは、その2種を交雑させて雑種を生み出したところ、雑種のヒナは、母鳥がどちらの種であるかによらず、マダラヒタキのさえずりの方によく反応することを発見した。このことは、ヒナの時期のさえずりの聞き分けが遺伝的に決定付けられており、母鳥の種からの強い影響に依存するわけではないことを示している。
このヒタキ類のさえずりの聞き分けに関する遺伝基盤は、地理的生息範囲が重複するそのような近縁種の遺伝的分岐を示すとともに、別の新たな種の形成でさえずりの聞き分けが果たす潜在的な役割を示唆している。
doi:10.1038/s41559-017-0192
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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