【進化】ヒト族の進化に影響を与えた湧水の存在
Nature Communications
2017年5月31日
東アフリカ地溝帯系におけるヒト族の進化と分散のパターンが地下水の利用可能量によって制御されていたという結論を示した論文が、今週掲載される。今回の研究では、地下水が、天然湧水の形で淡水を供給することを通じて、この地域における非人為的な気候変化の緩衝として作用したことが明らかになった。
東アフリカ地溝帯系は、活動的な大陸地溝帯の1つで、ヒト(Homo sapiens)の進化にとって重要な場所であるアフリカでは、現在、大陸を引き裂こうとする力が加わっている。この地域でのヒト族の進化と分散は、気候変化のみに依存するとこれまで考えられていた。しかし、非常に乾燥した気候だった時代にどの淡水源が利用可能だったのかについて解明が進んでいないため、その時にヒト族が生き残り、分散した過程と場所が明らかになっていない。
今回、Mark Cuthbertたちの研究グループは、東アフリカ地溝帯系の現在の地形のマップを作成して、450か所以上の現存する湧水を同定し、地下水の分布が気候によって変化する過程をモデル化した。そしてCuthbertたちは、これらのデータとモデルをヒト族の移動のモデルと組み合わせた。その結果、乾燥期においては、地表水が少ない孤立した居住地の存続にとって地下水の利用可能量が非常に重要なことが判明した。そのため、東アフリカ地溝帯系におけるヒト族集団の分散と生存の予想外の変動が、地下水源のために起こりやすくなった可能性がある。
doi:10.1038/ncomms15696
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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