Research Press Release
【神経科学】これから起こることを「早送り」で見ておく
Nature Communications
2017年5月24日
予期した1つの出来事の順列の冒頭部分を見せられた人間の脳内で、その順列全体が自動的に「早送り」で演じられることが明らかになった。この研究成果を報告する論文が、今週掲載される。
人間と動物の視覚系ではさまざまな出来事が予期され、それが意思決定に役立っている。この点に関する従来の研究は、主に静的な状況下で実施されていた。例えば、人間は、同時に遭遇することに慣れている複数のモノ(例えばコーヒーとベーグル)に対する反応時間の方が短いことが明らかになっている。しかし、我々の日常生活においては自動車のような動く物体に直面し、その動きを予測しなければならないことも多い。今回、Matthias Ekmanたちの研究グループは、そうした動きの予測が人間の脳内で行われる過程を解明するために、29人の健康な被験者に斑点の順列を見せ、超高速fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて、この斑点の順列に随伴する脳の活動パターンを明らかにした。次に、この斑点の順列における最初の斑点だけを被験者に見せる実験では、斑点の順列全体を早送りで見せた場合と同じ脳の活動パターンが観察された。以上の結果は、2週間後に同じ被験者を対象として行われた追試で確認された。
今回の研究結果は、予期された出来事を脳内であらかじめ早送りで演じておくことが、日常生活において動く物体の軌跡を素早く自動的に予測する方法となっている可能性を示唆している。
doi:10.1038/ncomms15276
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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