【ウイルス】ジカウイルスの蔓延を加速させたと考えられる遺伝的変異
Nature
2017年5月18日
最近のジカウイルス(ZIKV)の流行においてウイルスが急速に広がった一因がウイルスの遺伝的変異であったことが明らかになった。これはタンパク質の変異のことであり、このタンパク質は、蚊によるフラビウイルス(ジカウイルス、デングウイルスなどが含まれるウイルス属)の獲得に影響を与えていることがこれまでの研究で明らかになっている。この研究結果について報告する論文が、今週掲載される。
蚊が媒介するフラビウイルスであるジカウイルスはヤブカ属(Aedes)の蚊によってヒトに感染するのだが、このジカウイルスについては、フランス領ポリネシア(2013~2014年)と南米(2015~2016年)で流行するまでよく分かっていなかった。これまでのところはGong Chengたちが、蚊のフラビウイルス感染が非構造タンパク質1(NS1)によって高まることを明らかにしている。NS1は宿主の血清中に分泌され、蚊の消化管の免疫関門を克服する。
今回、Gong Cheng、Pei-Yong Shiたちの研究グループは、これと同じ機構によって、ジカウイルスの媒介昆虫であるネッタイシマカ(Aedes aegypti)によるウイルス獲得も促進されることを明らかにした。また、今回の研究では、NS1の分泌が増やし、蚊によるウイルスの獲得を増進するNS1の変異も同定された。このウイルスの単離株の分析も行われて、このウイルスが出現したのは2013年頃だと考えられており、Chengたちの研究グループは、最近の流行では、NS1の変異のためにジカウイルスの伝播が促進された可能性があると結論づけている。
doi:10.1038/nature22365
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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