【環境科学】ペンギンの運命を決めた火山噴火
Nature Communications
2017年4月12日
南極半島に存在していたジェンツーペンギンの最古で最大のコロニーの1つが、火山の噴火によってたびたび絶滅に近い状態に追い込まれていたことを報告する論文が、今週掲載される。この研究結果によれば、このコロニーは過去7,000年間で少なくとも3回にわたって局所的な絶滅に近い被害を受け、その後400~800年をかけて回復したとされる。
南極半島の北部沖合に浮かぶアードレイ島には、多様性を示す大型のペンギンコロニーが存在している。しかし、この多様性が、温暖化と海氷面積の変化によって脅かされている。ジェンツーペンギンの個体数が増加している一方で、アデリーペンギンとヒゲペンギンの個体数が減少しているのだ。残念なことに、このコロニーに関する長期記録がないため、このコロニーの過去の変化の解明とそれによって今後の変化を予測する能力が制約を受けている。
今回、Stephen Robertsたちの研究グループは、アードレイ島の中央部にある湖の堆積層に長い年月をかけて蓄積されたペンギンのグアノ(排泄物が堆積固化した物質)から見つかった生物地球化学的特徴に基づいて約7,000年間のペンギンの個体数の記録を再構築し、情報不足の問題に取り組んだ。その結果、Robertsたちは、ペンギンのコロニーに最も大きな影響を及ぼしたのが気温や海氷状態の変化ではなく、近くにあるデセプション島での火山の爆発的噴火であり、火山灰が地表を覆い、少なくとも3回はコロニーの放棄に追い込まれたことを発見した。さらに、このグアノの記録からは、コロニーがこうした火山噴火から持続可能な回復を遂げるまでに400~800年かかったことも明らかになった。
doi:10.1038/ncomms14914
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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