地球温暖化によって深刻化する北京の冬の煙霧
Nature Climate Change
2017年3月21日
中国の北京での重度の煙霧現象の発生頻度と持続性が気候変動によって高まっていることを報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究では、中国政府が厳しい排出規制を実施しているにもかかわらず、健康と経済に対する煙霧関連の影響が大きくなっている可能性が示唆されている。
最近になって中国全土で冬季の煙霧が多くなってきているが、その主たる原因は、急速な工業化と都市化に伴う大気汚染物質の排出量の増加とされてきた。ところが煙霧の形成に関連する特定の一連の気象条件の変化も北京での煙霧の発生頻度が上昇した一因であった可能性がある。
今回、Hong Liaoの研究チームは、観測結果と一連の気候変動シミュレーションを用いて、北京において煙霧を発生しやすくする気象条件が1948~1981年の期間から1982~2015年の期間までに10%増加したことを明らかにした。そしてLiaoたちは、こうした変化が今後も継続するという見方を示している。例えば、21世紀後半になると、2013年1月に広域的に発生した煙霧現象のような極端な気象条件の発生頻度が50%増加し、持続性が80%増加する可能性が高いとされる。
同時掲載のRenhe Zhang によるNews & Views記事では、「北京での激しい大気汚染のリスクを減らすには、大気汚染物質の排出規制による大気汚染の抑制とは別に全球規模で地球温暖化の減速を図るための活動が緊急に必要とされている」という見解が示されている。
doi:10.1038/nclimate3249
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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