【遺伝】アイリッシュ・トラヴェラーの起源
Scientific Reports
2017年2月10日
アイリッシュ・トラヴェラーという集団の起源を論じた研究論文が、今週掲載される。今回の研究では、アイリッシュ・トラヴェラーがその他のアイルランド人の集団から分岐したのが今から200~420年前だったことが示唆されている。この新知見は、アイリッシュ・トラヴェラーの起源をアイルランドの大飢饉(1845~1852年)の時期とした有力な仮説と矛盾している。
アイルランド国内のトラヴェラーのコミュニティーは29,000~40,000人からなり、アイルランドの総人口の約0.6%に当たる。アイリッシュ・トラヴェラーの起源については、この集団の歴史に関する文書証拠がないために論争が起こっており、広く受け入れられている学説による説明がなされていない。
今回、Gianpiero Cavalleriの研究チームは、アイリッシュ・トラヴェラー42人、ヨーロッパのロマ民族143人、アイルランド人定住民2232人、英国人2039人、ヨーロッパ人5964人、その他の民族931人の遺伝的データを比較して、トラヴェラーとその近隣に住む民族の関係を調べた。その結果、アイリッシュ・トラヴェラーの祖先は、他のアイルランド人によく似た古い時代のアイルランド人であり、ヨーロッパのロマ民族とは特に遺伝的結びつきはないことが明らかになった。Cavalleriたちは、アイリッシュ・トラヴェラーが他のアイルランド人から分岐したのは、少なくとも8世代前(1世代30年で計算した)のことだと考えている。
また、Cavalleriたちは、アイリッシュ・トラヴェラーの集団におけるホモ接合度(ゲノム全体において父母の双方から同じゲノム配列を受け継いだ状態が占める割合)に関する理解と遺伝的浮動による稀な遺伝子バリアントの増加傾向に関する理解が進むことは、アイルランド国内の疾患マップの作成にとって重要な意味を持つ可能性のある点も指摘している。
doi:10.1038/srep42187
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物学:雌のボノボは団結し、雄に対して優位性を発揮するCommunications Biology
-
量子物理学:通信インフラを活用した長距離量子通信Nature
-
人類学:カルタゴとフェニキアの間に家族的なつながりはほとんどないNature
-
気候変動:温暖化が進む世界で急激な「気温の変化」が増えているNature Communications
-
健康:高血圧の治療は認知症リスクを低減するかもしれないNature Medicine
-
気候:都市のヒートアイランド現象による気温関連死の評価Nature Climate Change