Research Press Release
多発性硬化症における可逆的な軸索損傷の発見
Nature Medicine
2011年3月28日
多発性硬化症患者に起こる軸索損傷は自然回復する可能性があるとの報告が寄せられている。
中枢神経系の炎症性疾患である多発性硬化症にかかると、免疫を介した軸索損傷が起こり、永続的な神経障害をきたすが、軸索損傷の発生機序はわかっていない。多発性硬化症に関する古典的見解によれば、軸索を覆って絶縁体の機能を果たし、神経シグナルの伝達を加速するミエリン鞘が失われることが、軸索損傷の前提条件とされる。
今回、M Kerschensteinerらは、生きたマウスの画像化を行い、多発性硬化症の実験モデルにおいて、新しい形態の軸索損傷を発見した。この疾患過程は、「局所的軸索変性(FAD)」と呼ばれ、軸索内ミトコンドリアの局部損傷、神経繊維の腫大、その後の軸索の断片化という各段階が順番に発生する。この実験では、ほとんどの腫大した軸索は、数日間にわたって状態に変化が見られず、その一部は自然に回復した点が注目に値する。
さらに、Kerschensteinerらは、多発性硬化症患者の病変部においてFADと一致する軸索の変化を発見しており、このことは、FADがヒトの多発性硬化症にかかわっている可能性があることを強く示している。
doi:10.1038/nm.2324
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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