Research Press Release
【幹細胞】幹細胞による白内障の治療
Nature
2016年3月10日
世界的に失明の主要な原因となっている白内障に対して、動物の内因性幹細胞を用い、侵襲を最小限に抑えた新しい治療法について報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究では、動物とヒト乳幼児の眼の水晶体が再生し、現行の標準的治療法と比べて、転帰が改善し、合併症が減ったことが実証された。
白内障の現行の治療方法は、濁った眼の水晶体を除去し、人工水晶体と置き換えるという外科手術だ。この手術は、先天性白内障の乳幼児に一般的に実施されるが、水晶体嚢に大きな切れ込みを入れる必要があり、そのために炎症や回復期間の長期化、数多くの水晶体上皮幹細胞/前駆細胞(LEC)の破壊が起こる場合がある。LECは、水晶体を外傷から守るという重要な役割を担っている。
今回、Kang Zhangたちは、哺乳類のLECを単離し、その再生能力を評価し、LECを保持しつつ元々の水晶体を除去するための外科的方法を開発した。そして、Zhangたちは、この方法を用いて、ウサギとマカクザルと12人の白内障患者(2歳以下)の水晶体の再生に成功した。Zhangたちは、この新しい方法による治療を受けた乳幼児において、水晶体嚢の開口部が1か月以内に治癒し、現行の標準的治療を受けた白内障の小児患者と比較して視軸透明度が20倍以上に達したことを報告している。
doi:10.1038/nature17181
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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