【気候変動】新しいモデルによって南極の氷の融解に関する手掛かりを得る
Nature
2016年3月31日
温室効果ガスの排出量が今のままのペースで増加を続けると、南極氷床の融解は、2100年には1メートル以上の海水準上昇に寄与し、2500年には15メートル以上の海水準上昇に寄与することが氷床モデルによる結果から分かった。その詳細を報告する論文が、今週掲載される。
全球海水準は、最終間氷期(130,000~115,000年前)に今よりも6~9メートル高かったことが知られており、鮮新世(約300万年前)にはもっと高かった可能性がある。いずれの場合にも南極氷床が海水準上昇の主たる要因と考えられてきたが、鮮新世と間氷期の海水準の値を使って氷床モデルの較正を行うことは難題だった。
今回、Robert DeContoとDavid Pollardは、大気温暖化と氷床動態を結びつける物理的過程(例えば、雨水による氷床を支える氷棚の破壊の進行や海に面した氷崖の崩落)を考慮にいれた高分解能の氷床モデルを使い、鮮新世と間氷期の海水準の目標値を使って較正し、温室効果ガス排出量の将来シナリオに適用した。そしてDeContoたちは、温室効果ガスの排出量がこのままのペースで増加すれば、南極氷床の寄与によって2100年には海水準が1メートル以上上昇し、2500年には15メートル以上上昇する可能性のあることを明らかにした。また、今後は大気温暖化が氷床の減少の主たる要因となり、海洋温暖化の長期化によって氷床の回復が数千年間遅れることも明らかになった。
また、このモデルは、強力な気候変動緩和シナリオによって、人間社会が高い海水準にさらされることが大きく減り、海水準の変化がほとんどないか、全くなくなることも明らかにしている。
doi:10.1038/nature17145
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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