Research Press Release
【気候科学】モデルシミュレーションと矛盾する数千年間の水文データ
Nature
2016年4月7日
北半球における1,200年間の水と気候の相互作用(水文気候)の変動が再現されたが、この新証拠は、20世紀の気候モデルのシミュレーションで示された異常降雨と異常乾燥の激化を裏付けるものとなっていないことが今回の研究で示唆されている。この結果を報告する論文が、今週掲載される。
今回、Fredrik Ljungqvistたちは、これまでに公表された過去1,000年以上にわたる北半球での降水、乾燥、洞窟生成物、木の年輪、海底堆積物、氷床コア、その他の水文気候変動の指標の記録を分析し、9~11世紀と20世紀の降水量が比較的多く、12~19世紀は乾燥していたことを報告している。この新知見は、¬850~2005年の降水量と気温のモデルシミュレーションの結果と原則的に一致している。しかし、今回のLjungqvistたちの再現では、気候温暖化によって降水量の多い地域で降水量が増加し、乾燥した地域で降水量がさらに減るというシミュレーションに示された傾向が裏づけられていない。Ljungqvistたちは、人間の活動が水文サイクルに及ぼす影響を評価するために研究を積み重ねる必要があると結論づけている。
doi:10.1038/nature17418
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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