Research Press Release
【材料科学】流体をチューブの中で自在に動かす
Nature
2016年9月8日
さまざまな液体を動かして曲がりくねった経路をたどらせたり坂を上らせたりできる光駆動式毛細管が今週報告される。この微小な毛細管チューブは、生物医学デバイスからマイクロポンプに至るまで、さまざまな技術に利用される可能性がある。
少量の流体を操作して反応や解析を行うシステムは、多くの実験室研究を支える上で重要であるばかりでなく、より直接的で実際的な応用もなされている。光エネルギーを用いて液体を動かすことは可能だが、既存の光駆動式の手法では、動きが単純な短距離の軌跡に限定される他、輸送可能な液体の種類も限られる可能性がある。
今回Yanlei Yuたちは、動脈壁の構造、特にその強さと変形して血液を全身に送る能力に着想を得て、光駆動式チューブシステムを設計した。このチューブシステムは光を照射すると変形し、このときの構造変化によって、速度と方向を調節しながら長距離にわたって液体を推進することができる。液体にS字形やらせん状の軌跡をたどらせることもでき、こうした液体操作は閉鎖系マイクロチャネルでは初の報告となる。また、このチューブを用いることで、既存の光駆動式手法では扱われたことのないエマルションやガソリンといった複雑な流体をはじめとする、多種多様な液体や混合物を輸送することができる。加えて、このシステムは、細胞懸濁液や緩衝液などの医用生体液体を扱うことができ、ラボ・オン・チップ・デバイスの作製に使える可能性があることが示唆されている。
doi:10.1038/nature19344
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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