セメントは炭素を放出するだけではない
Nature Geoscience
2016年11月22日
過去70年間にセメント生産の際に排出されたCO2のほぼ半分に匹敵する量が、その後のセメント生産物の中に閉じ込められているとの報告が、今週のオンライン版で発表される。
セメント生産によるCO2放出量は、化石燃料燃焼と工業的過程によるCO2放出量全体の5%を占めている。セメント生産は焼成と呼ばれる過程を通してCO2を放出する。この逆の過程(炭酸化として知られる)では、CO2がセメント生産物により吸収される。しかしながら、炭酸化は一般的にはセメントのカーボンフットプリントを評価する上では考慮されておらず、温室効果ガス目録に対する気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のガイドラインではセメント製造過程におけるCO2放出量を定量化する方法を提供しているが、セメント物質の炭酸化によるCO2吸収は考慮していない。
Zhu Liuたちは、セメントの特性に関する新しいデータと既存のデータを用いて、4種類の異なるセメント物質により耐用年数、解体および二次利用の際に全球上で封鎖されるCO2量を数学的にモデル化した。彼らは、4.5ギガトンの炭素が1930年から2013年の間に封鎖されたと見積もっており、これはこの期間に焼結により放出されたCO2の43%に匹敵する。
Liuたちは、セメント生産は長い間重要な人工的CO2排出源であると考えられてきたが、本論文で示されたCO2吸収に関する見積もりによって、セメントは生産された後には重要なCO2吸収源にもなることが示唆されていると指摘している。
doi:10.1038/ngeo2840
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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