【遺伝】イヌの愛想の良さに遺伝的基盤が存在している可能性
Scientific Reports
2016年9月30日
イヌは、ヒトに向けた社会的行動が発達しているが、このことに関連する複数の遺伝子が同定されたことを報告する論文が、今週掲載される。ビーグル犬を対象とした全ゲノム関連解析(GWAS)が実施され、関心を求める行動、ヒトのそばにいようとする行動などに関連している可能性のある5個の遺伝子を含む2つのゲノム領域が同定されたのだ。
今回、Per Jensenたちは、標準条件下で繁殖、飼育、ハンドリングを行った実験用ビーグル犬に「解決不可能な」課題をさせて、ヒトとの身体的触れ合いを始める傾向を示すかどうかを記録した。これは、3つの容器の上部についた蓋をそれぞれスライドさせて中身のおやつを取り出すという課題で、「解決不可能な」のは1つの蓋が固定されて開けられない構造になっているからだ。Jensenたちは、ビーグル犬がこの「解決不可能な」課題のためにヒトと目を合わせようとするなどヒトに向けた社会的行動を行った時に記録をつけた。
次に、上述したビーグル犬190頭のゲノムの解析が行われ、ヒトに向けた社会的行動に関連していると考えられる合計5つの遺伝子候補が含まれる2つのゲノム領域が同定された。今回の研究では、SEZ6L遺伝子内の1つの遺伝的マーカーが、ビーグル犬がヒトのそばで過ごした時間とヒトとの身体的触れ合いのあった時間に関連していることが明らかになった。また、ARVCF遺伝子内に位置する2つのマーカー候補もヒトとの触れ合いを求める行動に関連していた。
Jensenたちは、今回の研究結果を検証するために今後の研究の積み重ねが必要なことを指摘している。
doi:10.1038/srep33439
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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