インド-ガンジス盆地の地下水が抱える、量的ではなく質的な問題
Nature Geoscience
2016年8月30日
インド-ガンジス盆地で持続可能な地下水においての最大の脅威は、枯渇ではなく汚染であるとの報告が、今週のオンライン版に掲載される。この研究は、その地域にわたって行われた地下水測定を用いて、利用可能な地下水の60%以上が、ヒ素や塩分の高濃度の汚染により飲用や灌漑用に用いることができないことを明らかにしている。
インド-ガンジス盆地は全球の地下水抽出の25%を占め、パキスタン、インド、ネパールおよびバングラデシュに住む7億5千万人以上の人々の暮らしと農業活動を支えている。人工衛星重力測定は、農業のための汲み上げが増加するにつれて、その地域にわたる地下水水位は低下していることを示している。しかしながら、局所的なスケールで地下水分布を知るためには野外調査が必要である。
Alan MacDonaldたちは、そのような数千もの地下水帯の測定を既存の地下水データセットと組み合わせ、過去10年間のインド-ガンジス盆地全体の地下水変化についてのより広範な描像を明らかにした。MacDonaldたちは、地下水位は盆地全体の30%で特に大都市の近傍では低下しているが、灌漑用運河からの漏出による再充填により他の70%の地域では安定しているか、むしろ増加していることを発見した。しかしながら、MacDonaldたちはまた、インダス川、ブラマプトラ川、およびガンジス川の年間の流量の合計よりも20倍大きい体積となる、深さ200 m以下の地下水では、その60%以上がヒ素や塩分で汚染されていることも見つけている。
同時掲載のNews & Views記事で、Scott Fendorf とShawn Bennerは、この研究が「広大なインド-ガンジス盆地地域の水と食料の安全性を確保するために、地下水の量と質の両方を、能動的に管理しながら監視することの重要性」を示している、と述べている。
doi:10.1038/ngeo2791
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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