糖をください
Nature Chemical Biology
2010年3月1日
タンパク質に糖を付加する新しい方法が、Nature Chemical Biology(電子版)に発表される。この特別な糖とタンパク質の組み合わせは、ウイルス感染管理のカギであるとともに、筋ジストロフィーなどさまざまな疾患に関与しているため、今回の研究は、生物薬剤学および糖タンパク質の研究に直接応用可能なものである。
目的のタンパク質を大量に生産する場合、哺乳類細胞ではなく細菌細胞を利用するほうが、通常ははるかに容易である。しかし、糖タンパク質という一部のタンパク質では、十分に機能させるために、タンパク質の配列に糖鎖を付加することも必要である。細菌細胞で付加することができる糖は、哺乳類細胞の糖とかなり異なっているため、そうした有用な培養細菌細胞も、哺乳類本来の糖タンパク質の生産では応用範囲が限られている。
今回、L-X Wang、M Aebiたちは、C. jejuniという細菌の遺伝子をもつハイブリッド大腸菌を作製した。その遺伝子は、通常の大腸菌の遺伝子と協同して、哺乳類の糖タンパク質がもつ1番目の糖の結合を生成する。培養細胞では、不必要な別の糖も糖鎖に付加されるが、研究チームは、既存の実験室的方法を利用してそうした余分な糖を除去し、ほかの糖で置き換えることが容易であることを示した。
今回、この複合的な方法論により、正しく修飾された糖タンパク質を大量に生産し、生物学的研究や医薬品製造に供することが可能となった。
doi:10.1038/nchembio.314
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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