【進化】良い評判を得たいという気持ちが社会的協力を促進する
Nature Communications
2016年8月10日
人間は自分が権威者にどう思われているのかを気にしており、それが他人との協力を助長する可能性のあることがパプアニューギニアの狩猟採集社会の研究で明らかになった。また、今回の研究では、社会的評判が良くなることの方が非協力者を処罰することよりも協力行動を促進する効果が大きいことが示唆されている。この研究成果について報告する論文が、今週掲載される。
人間が社会において際立った評判を得たいと望むことは、人間の協力行動の進化的基盤の一例だ。この人間行動を示す証拠は、これまでのところ、人間の社会的イメージを研究室で(例えば、コンピューターシミュレーションによって)人工的に作り出すことによって得られている。
今回、Gianluca Grimaldaたちは、パプアニューギニアのテオプという結束の固い小規模な社会における人間の協力行動を調べた。テオプの社会構造は、構成員に規律を課すインフォーマルな権威を有している村の長老(いわゆる「ビッグマン」)が中心になっている。ビッグマンは、道徳の守護者として行動し、テオプの社会的ネットワークの中心に位置している。今回の研究では、ビッグマンが介入せずに見守るだけの状況下で、テオプの人々に社会経済的なゲームを行わせる実験が行われた。そして、テオプの人々は効率的に協力してゲームを行った。これに対して、見知らぬビッグマンが別の村からやってきてゲームの様子を見守った場合には、こうした協力行動は少なくなった。また、ビッグマンが見守っていると、ゲームのプレーヤーが非協力的な構成員を罰することが少なくなった。
以上の結果は、社会的権威を有する実在の人物が自分に対して抱く社会的イメージを気にすることの方が、自分の評判を想像して気にすることよりも協力行動を促進することを明らかにしている。
doi:10.1038/ncomms12288
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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