過去6,000年間ほとんど変わっていないオオムギ
Nature Genetics
2016年7月19日
6,000年間に大きな変化はなかったことが2つの研究により明らかになった。重要な穀物であるオオムギの遺伝学的特徴を調べる研究としては、これまでで最も網羅的なものである。データを組み合わせて解析することで、オオムギの栽培化過程や各地の環境に適応していった機構を明らかにすることができた。
T Fahima、J Krause、E Weiss、N Steinたちの研究グループは、イスラエルの洞窟から、6,000年前のオオムギ粒を発掘した。この洞窟は、イスラエルの死海近くに位置する古代の要塞、マサダにあり、近寄るのが難しい砂漠の中の洞窟である。この地域の乾燥した環境が生物の保存に適していたため、彼らは、古代のオオムギの遺伝物質を抽出してそのDNAの配列決定を行うことができた。一方、R Waughたちの研究グループは、世界中から収集されたオオムギ植物260以上について、DNA配列を解読した。これら2つの貴重なデータセットは、解析後に比較が行われ、それにより、初期農耕民によるオオムギの栽培化の歴史に関する手掛かりが得られた。
れらの研究により、過去6,000年間に農法の変化と気候変動の影響があったにもかかわらず、古代のオオムギ粒に最も近縁であるのは、現代のイスラエルとヨルダンのオオムギであることが明らかになった。この知見は、オオムギがヨルダン渓谷上流域で初めて栽培化され、その後世界中に広がったという仮説の正しさを裏付けるものである。
doi:10.1038/ng.3611
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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