マイクロレンズを3D印刷する
Nature Photonics
2016年6月28日
これまでにない高い光学品質の微小な複合マイクロレンズが、イメージセンサーなどの小型構造体の表面や、髪の毛2本分の太さしかない内視鏡(空洞臓器の検査に使用される)用光ファイバーの先端部に直接3D印刷できるようになったことが、今週のオンライン版に報告される。こうした高性能複合レンズは、わずか約0.1 mmの大きさなので、塩粒ほどの大きさのマルチレンズやマイクロスケールのイメージングシステムを実現可能にする。
現行のレンズ製造工程では、レンズの大きさと形状が限られるため、光学性能に制限がある。高い光学性能と収差補正を実現するには、非球面形状のマルチレンズ素子が必要である。Timo Gissiblたちは、フェムト秒レーザーによる直接書き込みシステムを用いて、およそ0.1 mmの大きさのマルチレンズシステムを3D印刷した。マルチレンズシステムは、容器状支持体の中で複数のシングレットレンズ(単レンズ)を組み合わせて複合レンズにした構造であり、1秒間に数センチメートルの速さで印刷される。
Gissiblたちは、普通の注射針の中にすっぽり入るほど細い光ファイバー(長さ1.7 m)の先端部にトリプレットレンズシステムを直接印刷し、このシステムが、レンズから3 mm離れた物体を光ファイバーの反対側の端にうまく結像できることを示している。最後に、4つの屈折界面を有するレンズシステムアレイを、デジタルカメラに使用される5メガピクセルのCMOSイメージセンサー上に印刷できることを示している。今回の方法は、次世代内視鏡や、小型ロボットやドローン用のCMOSセンサー上に直接配置される高品質イメージング素子といった小型光学装置の印刷に向けて道を開くものであると、Gissiblたちは結論づけている。
doi:10.1038/nphoton.2016.121
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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