【動物学】父親の養育行動は母親の多産性と密接な関係がある
Nature Communications
2016年6月15日
哺乳類の場合、雄が食料を提供し、あるいは仔の養育に貢献すれば、雌の繁殖率(繁殖能力)が上昇するという研究結果を報告する論文が、今週掲載される。雄による養育は、雌の授乳期の短縮、同腹仔の増加、繁殖期の頻度上昇と関連していることが分かったのだ。
哺乳類のいずれの種でも、雌は大量の資源を仔の養育に投資する。ところが、雄が雌(母親)に食料を提供することで養育に直接的または間接的に貢献しているのは、哺乳類全種の約10%にすぎない。雄にとって、仔を養育することは新たな交尾の機会を諦めるということであり、その雄が仔の父親であることの確実性が高まった場合あるいは将来の交尾機会が少ない場合には、雄による仔の養育が進化する可能性が高まる。
今回、Hannah WestとIsabella Capelliniは、雄による養育の新たな利点の可能性を探るため、529種の哺乳類について、それぞれの生活史の特徴と雄の援助行動(母親または仔に対する食料の提供、仔を寄せ集める行動、仔の毛づくろい、仔を運ぶ行動)のデータセットを収集し、解析した。そして、Westたちは、これらの哺乳類種の進化史を考慮に入れた上で、雄が雌に食料を提供する行動が同腹仔の増加と関連していることを明らかにした。これに加えて、Westたちは、雄が雌に食料を提供する行動と仔運びを助ける行動が授乳期の短縮と関連しており、その結果として繁殖期の頻度が上昇することも明らかにしている。
雄による養育行動は、長期的に見れば繁殖機会を増やし、これによって短期的な交尾機会の減少を代償している可能性のあることが、今回の研究によって得られた知見から示唆されている。
doi:10.1038/ncomms11854
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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