企業のwin-win型環境戦略が否定的な評価を受ける傾向
Nature Climate Change
2016年5月24日
ますます環境にやさしい企業と思わせるための取り組みが行われても、それによって企業が儲けていると思われてしまえば、かえって逆効果になってしまう可能性を明らかにした論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究では、企業が自らを環境にやさしい市民であると宣伝することに、消費者の否定的反応を引き出すリスクがあることが示唆されている。
多くの企業は、環境にやさしいと同時に収益を上げられる事業活動を展開したいと考えている(いわゆる「win-win型戦略」)。例えば、ホテルでのタオルの再利用の奨励、エネルギー効率の良いビルの建設、環境にやさしい組織の支援などである。
今回、George NewmanとTamar Markovは、米国で英語を話す成人を集めて、4種類のオンライン型社会実験に参加させて、環境にやさしい企業活動に対する一般市民の反応を調べた。その結果分かったのは、環境に利益をもたらすとともに企業に金銭的利益をもたらす取り組みが、利益を得ることだけを意図した取り組みよりも参加者の評価が低かったことだ。参加者に地域社会の責任に注目するように奨励してから企業の宣伝を見せた場合には、こうした企業の取り組みの評価が特に低くなった。実のところ、消費者が企業のwin-win型戦略を受け入れる確率が最も高かったのは、例えば、効率的な市場に参加した時のことを書かせることによって、市場と向き合う考え方をするように事前準備した場合だった。
NewmanとMarkovは、企業が消費者からの反発を避けるためには、持続可能性のための取り組みに関する広報において、環境への利点ではなく、金銭的利益に関する情報提供に力を注ぐべきだという考えを示している。
doi:10.1038/nclimate3033
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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