【進化】旧石器時代のアフリカへの逆移動
Scientific Reports
2016年5月19日
Evolution: A Palaeolithic migration back to Africa
ルーマニアのPestera Muierii洞窟で発見された35,000年前のホモ・サピエンスのミトコンドリアゲノム(ミトゲノム)について報告する論文が掲載される。今回の研究では、このホモ・サピエンス(PM1)が、これまでに古代人や現代人において同定されたことのないU6 basal*という共通祖先(ハプログループ)を持つ遺伝学的集団に属することが示唆されている。今回の研究で得られた知見は、上部旧石器時代初期(約45,000年前~)に西アジアから北アフリカへ逆移動があったとする仮説を裏付けている。
これまでに行われた現代人のミトゲノム解析では、約45,000~40,000年前のユーラシアへの拡大と同時期に、一部のヒト集団が北アフリカへ戻る動きを始めたことが示唆されている。しかし、北アフリカで発掘される化石が非常に少なかったため、そのような旧石器時代の移動現象の直接的な証拠を得たとする研究発表はなかった。
今回、Concepcion de-la-Ruaたちは、PM1の2本の歯からDNAを抽出して、ミトゲノムを解読し、解析を行った。そして、de-la-Ruaたちは、今回新たに同定されたU6 basal*ハプログループの起源がユーラシアにあり、主に北西アフリカの現代人で見つかっている複数のハプロタイプがU6 basal*由来のものとする仮説を提唱している。また、de-la-Ruaたちは、このPM1系統が上部旧石器時代初期の西アジアからアフリカへの逆移動の際に南東ヨーロッパに分岐したものであった可能性も指摘している。
doi:10.1038/srep25501
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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