【遺伝】キリンの背が高くなった過程の解明に役立つ遺伝子
Nature Communications
2016年5月18日
キリン科に属するキリンとオカピのゲノムの塩基配列が初めて解読された。今回の研究は、キリンの独特な身体形状と生理機能の進化過程に関する遺伝学的な新知見をもたらし、有蹄動物の進化に関する理解を助けるものとなっている。この研究成果について報告する論文が、今週掲載される。
今回、Douglas Cavener、Morris Agabaたちは、ケニアのマサイマラ国立保護区と米国のナッシュビル動物園の雌のマサイキリン(Giraffa camelopardalis tippelskirchi)2頭と米国のホワイト・オーク・ホールディングスの雄のオカピ(Okapia johnstoni)1頭のゲノム全体の塩基配列を解読した。そして解読結果の解析によって、キリンの身長と心血管系の適応が、少数の遺伝子の変化を通じて並行して進化してきたことが明らかになった。また、これらのゲノムの比較が行われ、さらには他の哺乳類のゲノムとも比較された結果、オカピの首が短いのにキリンの首が進化によって長くなった原因が、2つのタンパク質群(胴体と四肢の発生時の遺伝子発現を制御するタンパク質と成長因子[細胞増殖を促進する物質]の遺伝子発現を制御するタンパク質)における遺伝学的変化である可能性が示唆されている。このようなタンパク質がコードされた遺伝子の多くが心血管発生も調節することが知られているため、キリンの独特な身体形状は、キリン独自の生理機能を可能にする循環系の適応と共進化した可能性が高い。
今回の研究は、キリンの象徴的な身体形状と生理機能に関する情報をもたらすだけでなく、今後の保全研究に役立つ可能性もある。
doi:10.1038/ncomms11519
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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